小室
文
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私達の日常ではメールは欠かせないコミュニケーションツールです。 それを実現する為に、 導入される MTA( Mail Transfer Agent ) は、 どのソフトを使ったら一番コストパフォーマンスが良いか、 またどうやったら会社、 グループ、 個人のニーズに答 える事が出来るか、 システム管理者は日夜頭を悩ましているはずです。 そして一度導入したメールサーバーの仕組 みは、 なかなか別の仕組みに乗り換えるのは、 時間と費用がかかり、 問題があったとしてもなかなか移行し づらいという現状もあり、 MTA を決めるのは人生でなかなか訪れない大決心の一つである事は明白です。 MTA の一つ、 Exim は Debian の Default MTA と呼ばれながらも、 今や Postfix の人気にすっかり影を潜め て過去の栄光に甘んじているのが現実です。 今日は Exim の歴史、 利点・不利点、 導入方法を御紹介しま す。 皆さんの MTA に選ばれなかったとしても、 Exim はこういうパッケージなのか!と知って頂ければ幸い です。
Exim*1
とは、 Unix もしくは Unix like な OS の上で動く Mail Transfer Agent です。 Cygwin を使えば Windows の上でも
動かす事が出来ます。 Exim はケンブリッジ大学で 1995 年に Philip Hazel さんによって開発されました。
ケンブリッジ大学では、 複数の MTA が動いていて (Sendmail, Smail, PP ?などなど)、 そんな環境にうんざりしてたがどうか
は不明ですが、 Philip Hazel さんは Smail を拡張して MTA を大学のニーズに合わせて作ろうと試みました。
しかし残念ながら、 Smail 拡張はあっさり諦め、 Hazel さんはスクラッチから MTA を作ろうと試みる事
にしました。 その作業が、 彼が所属した Computer Sceince の仲間に知れわたり、 FTP サーバーを立てら
れ、 配布されるようになりました。 書いている途中で配布がされるようになった為、 正式な Exim 0 もし
くは 1 はリリースしていません (少なくとも Hazel さんはリリース出来なかったと思っているようです)。
元々 Sendmail, Smail を触っていた Hazel さんは Sendmail に代わる MTA を作ろうと Exim を設計されています。
1995 年?月 | Exim 開発開始 |
1995 年 11 月 | 同僚が FTP サーバをつくりパッケージを配布始める。 クチコミで広がる |
1998 年夏 | Perl の正規表現ライブラリーがなかったので作る (PCRE) |
1999 年 3 月 | コードネーム Slink の Debian 2.1 リリース。 Exim をディフォルト MTA として起用する |
1999 年 9 月 | ケンブリッジ大学で Exim の講座を開始する。 |
2000 年 8 月 | コードネーム potato の Debian 2.2 リリース |
2002 年 7 月 | コードネーム woody の Debian 3.0 リリース |
2004 年 5 月 | ケンブリッジ大学が Exim を正式にサポートすると宣言 |
2005 年 6 月 | コードネーム sarge の Debian 3.1 リリース |
2007 年 4 月 | コードネーム etch の Debian 4.0 リリース |
現在の Exim のメンテナーは
です。 Slink で Exim が搭載されるようになる前から、 Sendmail や Smail から Exim へ移行を試みる人が沢山いたようです。 日本ではマニュアルの日本語可があまり進まず (現在も小数の人達が作業しているのみ)、 Slink で Exim が搭載されたので、 移行した、 という人が多かったようです。
1996 年 09 月 | Tim Cutt が Debian で Exim をパッケージとして提供する為に作業を始める |
1997 年 05 月 | Exim が unstable に入る by David Sewell |
1999 年 03 月 | Slink で Exim をディフォルト MTA として起用する。 |
当時は Postfix、 Sendmail, Smail などがあったりましたが、 ライセンス問 題*2 、 機 能の充実度合などがあり、 Debian の Defualt MTA になったようです。
MTA | ライセンス形態 | メイン製作者 | リリース状態 |
qmail | DJB ライセンス | D. J. Bernstein | 1997 年に出したっきり |
Postfix | IBM Public License | Wietse Zweitze Venema | 1997 年にリリース後、 都度都度にリリース |
Exim | GPL | Philip Hazel | 1995 年にリリース後、 都度都度リリース |
qmail
Postfix
Exim
現在の Debian の stable である etch には以下の Exim 向けパッケージが用意されています。
exim4 | Exim 4 を簡単にインストールする為にメタパッケージ |
exim4-base | 全 Exim 4 パッケージ支援パッケージ |
exim4-config | Exim 4 設定用パッケージ |
exim4-daemon-heavy | 追加機能 (exiscan-acl 含む) を搭載しているデーモンパッケージ |
exim4-daemon-light | 簡易機能を搭載しているデーモンパッケージ |
exim4-daemon-light-dbg | debug 用 |
exim4-dbg | debug 用 |
exim4-dev | ヘッダーファイル用の Exim 4 パッケージ |
exim4-doc-html | Exim 4 の html 形式のドキュメントパッケージ |
exim4-doc-info | Exim 4 の info 形式のドキュメントパッケージ |
aptitude install exim4 exim4-base exim4-config exim4-daemon-heavy
|
か
aptitude install exim4 exim4-base exim4-config exim4-daemon-light
|
を実行します。
exim-config によって必要な情報入力はプロンプトが出るので指示に従います。
Philip Hazel さんは 2007 年 2 月 8 日付で、 9 月末に Exim から引退したいと申し出ましたが、 まだ決着はついていません。 す
でに Exim を Hazel さんと同等に知っているメンテナーが世界中にいるので、 肝はそれを統括するマネージャーのような人を
立てる、 という事が大事になってくると思われます。
メインで動いている人達は Exim の新機能や、 Exim をどのように運営、 更新をしていくか Exim-future@exim.org という
場所で会議をしようと試みています。
Debian では、 Exim 5 がリリースされるタイミングが現在もなお不透明な為、 例え Lenny が近い未来リリースされる事が
あっても、 その時に Exim 5 が間に合うとは保障出来ません。 日本では私がとりあえずマニュアルの翻訳をしようと Exim
ユーザー会を作ってみました。
https://sourceforge.jp/projects/exim-jp
第 32 回東京エリア Debian 勉強会 2007 年 9 月
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