小林儀匡
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Debian Weekly News (DWN) という、 Debian コミュニティのために毎週発行されるニュースレターを御 存 知 で し ょう か 。 Debian 通になるためには読むのが必須とされている (?) ニュースで す*25 。 Debian JP の debian-users メーリングリスト*26 を購 読 し て い る か た な ら 、 最 近 で は 毎 週 の よ う に 翻 訳 し た も の が 流 れ て く る の で 知 って い る で し ょう 。 こ の DWN 翻訳作業は、 以前は今井伸広さんが一人でされていましたが 2005 年 6 月ごろから DDTP*27 日本 語 チ ー ム コ ー デ ィネ ー タ の 田 村 一 平 さ ん 、 そ し て 小 林 が チ ー ム を 組 ん で お こ な って い ま す 。 こ こ で は 、 その翻訳作業の流れについて説明します。
DWN は Debian コミュニティのための週刊ニュースレターで、 UTC で毎週火曜 18:45ご ろ (JST で毎週水曜 3:45 ごろ) に発行されます。 「週刊」 というだけあって基本的 に 毎 週 発 行 さ れ ま す が 、 発 行 さ れ な い こ と も 年 に 数 回 あ り ま す 。 発 行 形 態 は メ ー リ ン グリストとウェブページの 2 種類あり、 前者は本家の debian-news メーリングリス ト*28 で 購読できます (もちろんこのメーリングリストには DWN の他に不定期のニュースも珠に流れてきます)。 また後者は http://www.debian.org/News/weekly/で参照できます。 様々なメーリングリストでの話 題やイベントについて書かれているので、 読んでおくと Debian 界隈のニュースに (無駄に) 詳しくなれ ます。
DWN の編集は最近ではほとんど Martin ’Joey’ Schulze 一人の作業に委ねられています。 しか しフッタに書かれる編集者情報を見る限り、 2 号に 1 号くらいは他の人が助けているよう です。
ちなみに創刊号は 1999 年 1 月 4 日に出され、 その編集者は Joey Hess でした。 記念すべき第 1 号の editorial によれば、 Linux Weekly News*29 を 真似て作られたようです。 また editorial の次に書かれた記事第 1 号のタイトルは ‘RMS is using Debian.’ です。
ウェブページ版の DWN は Debian のサイトの一部なので、 他のページと同じ CVS リポジト リ*30 、 そして同じ WML というファイル形式を利用しています。
ファイル形式には他のページと同様に WML が用いられています。 WML とはウェブサイトメタ言語 (web site meta language) のことで、 Debian ではwmlパッケージとして提供されています。 簡単に言っ てしまえば HTML に命令を混ぜたような言語で、 例えばウェブページのコンテンツに定型的なヘッダ・ フッタ、 さらに HTML の head を加えたりするのに用いられています。 また、 条件分岐を用いた、 「○○ のリリース前にはこのコンテンツを表示し、 リリース後にはこのコンテンツを表示する」 というような表示の切り替えや、 Debian のウェブページの翻訳版がオリジナル版のどの バージョンに基いているかを管理するのにも用いられています。 WML についてより詳しく 知りたければ http://www.debian.org/devel/website/using_wml を参照してくださ い*31 。
Debian Weekly News の場合だと WML の形式は決まっています。 以下では (わざわざ説明する必要もな い 、 見 れ ば 分 か る も の だ と 思 い ま す が ) DWN 2005 年第 44 号のものを例にとって説明し ます。
まず最初に命令が決ます。 ここには、 発行日時・そしてアーカイブのページに表示されるサマリ (主だった記事のキーワードのリスト) が書かれます。 その後に CVS の Id が書かれてい ます。
#use wml::debian::weeklynews::header PUBDATE="2005-11-01" SUMMARY="Dependencies, OpenSSL, Berlinux, RFCs, Kernel, Packaging, GTK, GNOME"
# $Id$ |
その後で、 ‘Welcome to this year’s nthissue of DWN, the weekly newsletter for the Debian community.’ で始まる editorial が来ます。
<p>Welcome to this year’s 44th issue of DWN, the weekly newsletter for the
Debian community. Nathanael Nerode <a href="http://lists.debian.org/debian-devel/2005/10/msg00388.html">reported</a> that current GCC versions support the old i386 processor again and hence Debian could retain i386 compatibility in the upcoming <a href="$(HOME)/releases/etch/">etch release</a>.</p> |
あとは普通の記事の繰り返しです。
<p><strong>Calculating Development Package Dependencies.</strong> Jay
Berkenbilt <a href="http://lists.debian.org/debian-devel/2005/10/msg00184.html">\ proposed</a> to work on a <a href="http://packages.debian.org/debhelper">debhelper</a> script that helps calculating <a href="http://packages.debian.org/libtool">libtool</a> dependencies for development packages. Goswin von Brederlow <a href="http://lists.debian.org/debian-devel/2005/10/msg00519.html">pointed out</a> that with <a href="http://raw.no/debian/amd64-multiarch-2">\ multiarch</a> there may be concurrent <code>.la</code> files to handle. No consensus in favour of such a script was reached. Junichi Uekawa (上川 純一) <a href="http://lists.debian.org/debian-devel/2005/10/msg00316.html">\ mentioned</a> the <a href="http://packages.debian.org/d-shlibs">d-shlibs</a> package that contains scripts to support the maintainer in this regard.</p> |
以上が DWN の記事部分です。
記事部分のあとには、 箇条書で書けるような様々な情報のコーナーが続きます。 主に前号の発行以降に 変化があったパッケージについての情報で、 最近載っているのは
の 4 コーナーですが、 このうち「削除されたパッケージ。 」 は比較的新しい項目です。 去年は、 Debian Package a Day’s Journal*32 で 紹介されたパッケージのリストを含む ‘Debian Packages introduced last Week. Ever’ ( 「先週紹介された Debian パッケージ。 」 ) というコーナーがあったのですが、 これは、 ウェブページが更新されなく なった (さすがにネタが尽きた?) ために廃止されたようです。 以下にコーナーの例を示し ます。
<p><strong>Security Updates.</strong> You know the drill. Please make sure
that you update your systems if you have any of these packages installed.</p> <ul> <li>DSA 872: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-872">koffice</a> -- Arbitrary code execution. <li>DSA 873: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-873">net-snmp</a> -- Denial of service. <li>DSA 874: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-874">lynx</a> -- Arbitrary code execution. <li>DSA 875: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-875">openssl094</a> -- Cryptographic weakness. <li>DSA 876: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-876">lynx-ssl</a> -- Arbitrary code execution. <li>DSA 877: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-877">gnump3d</a> -- Several vulnerabilities. <li>DSA 878: <a href="$(HOME)/security/2005/dsa-878">netpbm-free</a> -- Arbitrary code execution. </ul> |
最後に定型メッセージが入ります。
<p><strong>Want to continue reading DWN?</strong> Please help us create this
newsletter. We still need more volunteer writers who watch the Debian community and report about what is going on. Please see the <a href="$(HOME)/News/weekly/contributing">contributing page</a> to find out how to help. We’re looking forward to receiving your mail at <a href="mailto:dwn@debian.org">dwn@debian.org</a>.</p> |
そしてフッタ用の WML 命令が入ります。 編集者の名前を書くのに使われます。
#use wml::debian::weeklynews::footer editor="Martin ’Joey’ Schulze"
|
翻訳作業はだいたい以下のような流れになっています。
Martin ‘Joey’ Schulze は、 オリジナル版をリリースするために独自のリポジト リ*35 を 用いています。 彼はそれに記事を追加していき、 UTC で月曜日の夕方に、 「ごく親しい関係者」 向けに DWN のプレビューをリリースします。 彼はこのプレビューをdwn@debian.orgに送り、 DWN チームのレビューを受けます。 またプレビューは、 早目に翻訳にとりかかりたい人のために dwn-trans@debian.orgにも送られます。 こうして、 いくつかの言語ではオリジナル版の正式なリリース と同時に翻訳版をリリースすることができるようになっています。 日本語版は現在、 正式リリースを待っ て作業を開始しています。
翻訳チームメンバー 3 人への作業の割り振りは基本的に今井さんが行います。 チーム制を始めた ば か り の こ ろ は 「記 事 部 分 前 半 」 ・「記 事 部 分 後 半 」 ・「そ れ 以 外 (様々なコーナー)」 という 分け方をしていました。 しかし、 記事というのは流れがあるので訳していてそれなりに楽 しいのですが、 「それ以外 (様々なコーナー)」 は、 脆弱性・パッケージ削除理由といった 定型文句が多数を占めるものがある一方で、 流れがなくて訳しづらいパッケージ説明文も あります。 (どちらにしろローテーション制なのですが) それだとやりがいに差が出るため か*36 、 最近では「記事部分の 1/3 とどれかのコーナー」 という分け方になっているようです。
翻訳作業は、 CVS リポジトリからオリジナル版の DWN の wml ファイルをコピーして始めます。 このと きファイルのコピーには、 同じリポジトリに入っているwebwml/copypage.plを用います。 というのも、 この Perl スクリプトはコピー元のオリジナル版 wml ファイルに含まれる CVS の Id キーワードの値から 翻訳バージョンチェック用の WML 命令を作り出してくれるからです。 またこのスクリプ トは、 オリジナル版 wml ファイルに含まれている Latin-1 文字コードの文字を適切な文 字実体参照に置き換え、 ASCII だけを含むファイルにしてくれます。 ウェブインタフェー スを使ったダウンロードや、 cpコマンドによる生のコピーでは、 それらがおこなわれま せん。
実際の翻訳作業では、 査読のしやすさを考えて、 オリジナルの記事・リスト項目を残し、 その後ろに翻
訳をつけていきます。 「この文の意味がよく分からない」 「この単語はこう解釈した」 といったメモを査読
者に残したい場合は、 「 リリース作業は次のような手順でおこないます。
翻訳作業時には以下のような点に注意を払います。
今後の課題としては以下のようなものがあるでしょう。 中には DWN の翻訳に留まらず他の翻訳にも関係
す る も の も あ り ま す 。
小林が翻訳作業によく用いているのは、 英辞
郎*40 、
NDTPD*41 、
Lookup*42 の組み合わせです。 英辞
郎のデータを FreePWING*43 で
変換して得られたデータに、 Emacs 上のクライアント Lookup からサーバ NDTPD を経由してアクセス
します。
また、 文書の変更を管理するのに、 バージョン管理システムとして
Subversion*44 を
利用しています。 差分を unified diff で表示しても分かりにくいときは、
DocDiff*45 で
表示させると分かりやすくなることがあります。
東 京 エ リ ア
Debian 勉強会 2005 夏_________________________________________________________
8.4.4 日本語版リリース作業
8.5 翻訳作業時の注意点
8.6 今後の課題
8.7 おまけ: 翻訳作業に有用なツール